コンビニで夜勤していた頃の話
学生時代は色々なバイトをしていた私。
中でも田舎のコンビニ夜勤は業務が淡々としていて客も少ない。
なので、コンビニの夜勤は客とスタッフ含め会う人がほぼ間違いなく決まっている。
バイトは2人シフトで22:00~4:00まで。私ともう1人を除いてあと2人外国人だった。
稀にどうしてもシフトに穴が空いた時に助っ人で70代のおばあちゃんが入る。
おばあちゃん以外は男である。
深夜のコンビニにおばあちゃんが働いてるのを想像すると中々シュールな気がするのは自分だけだろうか。
仕事がとにかく遅いので、店長からもあまり好かれてなくシフトの穴埋め要員としての扱い。
リアルにハエが止まる動きと言われていたほど。
他のスタッフの内訳は1人はバングラディッシュ人で黒人寄り。もう1人は東南アジアの人。2人とも留学生で21-23くらいの歳。
そして唯一日本人の30歳の人。不二子Aの笑うセールスマン喪黒福造に似ている。
夜勤スタッフの中で唯一まともに働いてくれてかつ1番古株で深夜業務なら何でも知ってる人だ。
この人が週6くらいで出ていて、この人が新人夜勤の教育係的なこともしている。
このバイトを始める前はニートをしていて親から三十路を機に追い出されたらしい。
しかし、実家からかなり近いとこにアパートを借りていて、毎日実家に帰っては飯を食わせてもらっている。
アパートはほぼ素泊まり状態でほとんど何もないらしい。
唯一の趣味はパチスロのみという深夜コンビニによくいそうと言うと失礼だがそんな感じの人だ。
これまで彼女がいたことがなく恐らく童貞魔法使いだと私は勝手に思ってる。
この人が1番まともなのでシフトが一緒だと精神的に楽である。
なぜなら、他の外人スタッフは日本語は少し分かるが、如何せん隙あらばサボる。
おばあちゃんはサボらないけどクソ遅いので結局2人と変わらない。
仕事内容は大したことないが、極力サボってくるので2人しかいない分たまにキツいのと、客が少ない分、話しやすい相手がいないと時間が過ぎるのが遅い。
バングラディッシュの黒人は俳優で言うとウィル・スミスに似ている。
母国に彼女がいて休憩の時、毎回バックヤードでTV電話を彼女か家族としている。これはアジア人の方も同じ。
外国人って本当に家族愛がすごいと思う。よく恋人を家族との食事に誘うと聞くが、自分からしたら結婚する時くらいじゃないとそれはないかなぁと思ってしまう。
ウィルは喪黒さんとシフト同じ時に休憩中バックヤードに呼んで彼女をTV電話越しに紹介してくるらしい。
喪黒さんは勝手に認知されてて困惑していた。
なのにFacebookとかバーで日本人女をよくナンパしている。この人もほぼ毎日シフト出ているので喪黒さんとほぼ毎日会っている。ウィルが一方的に仲が良い。
よく週末ホームパーティを開いていて喪黒さんを誘うがずっと断られている。
しかも喪黒さんに毎回バイトで会う度に近場で良いソープランドがないか聞いてきてー緒に行こうと誘っているらしい。
喪黒さんは童貞魔法使いなのでそういう遊びにも興味が無いため行く気がなく毎回断っているらしい。
もう1人のアジア人の方はめちゃくちゃタイ人の平均顔って感じ。
こっちも母国に彼女がいるらしい。
ほぼ無口なのでウィルより面白くはない。
彼もサボり癖があり、最初の頃なんかは裏にある洗濯機がある小さい部屋で勝手に寝ていた。
最初の頃、仲良くなろうとしてたのか私に「こっひー飲むか?」って言いながら母国から持ってきた海外のスティックタイプの粉コーヒーをよくくれた。ありがとうと言いながら受け取ったが成分もなにも分からなかったのとパッケージの絵柄がサングラスのおっさんの写真がプリントされた胡散臭いものだったので全部捨ててた。申し訳ない。
以上のメンツで回してたわけだが、こんな感じの面々なので店長は自分が出たい日のシフトはほぼ全部入れてくれた。
店長はオーナーでもあったので自分の店をかなり大切にしていて昼間とかに深夜の監視カメラの映像から夜勤の仕事ぶりをチェックしているらしい。
前に喪黒さんがずっとバックヤードで座って監視モニターから客がレジに来たのを見たら出ていくというルーティンをしていたら翌日怒られたらしい。
仕事が雑な外人2人や、おばあちゃんのみで夜勤をさせる事もまずなかった。
必ず私か喪黒さんと組ませてシフトを作っていた。
私も喪黒さんもバイトなんだから言われたことだけで、ノルマだけ時間がくるまでこなしていればそれでいいという考えなので、そんなバリバリ仕事ぶりを見せていた訳ではない。
それでも評価されるくらいの何ともレベルの低い職場である。
ちなみにコンビニ夜勤の一番の時間潰しは色々商品が入荷してくるのでそれを検品して棚に並べること。時期によっては季節限定の棚作りなんかもある。
こういった物が入荷してくるまで基本接客くらいしかないが、客が少ないのと常連がほとんどなので何となく覚えてしまう。
来るタイミングも買っていくものも大体同じだからである。
ただ1番意味不明だったのが朝方4時くらいにいかにも夜職っぽい身なりの40前後くらいの女が男を車に残して来店してくる。
主に弁当とドリンク、たばこなのだが、変なのが毎回電話で何を買うか女が聞きながら選んでること。
車の運転席を見ると男も毎回電話しているので間違いなくこいつら、この近距離で電話しているのだ。
こんな買い出しスタイルは初めてでだしアホすぎだと思った。
あと週一くらいでくる2人組の仲良しそうなインド系の外人男性が毎回互いにカップ麺と酒を買って店内にあるイートインスペースで2時間くらいいる。これが中々の邪魔でたまに後から追加で弁当を1つ買って来る時があるのでレジを気にしないと作業ができないのだ。
喪黒さんが毎回邪険にしていて「居酒屋代わりにしてやがる。中高生かよ」と言っていた。
ただ数ヶ月してから全く来なくなった。
私は急に来なくなってしまったのでVISAが切れて強制帰国したか事故にあったんじゃないかと勝手に想像してた。喪黒さんはめちゃくちゃ喜んでたなぁ。
あと客ではないのだが、仕事終わり間際の4時にくる雑誌の配達にくる元ヤンっぽいお兄ちゃんがいるのだけど、この人が分単位で時間に正確にくる。
新人の頃、研修中に喪黒さんに入荷の時間帯を聞いていたが「雑誌だけは絶対に4時ジャストにくる。性格なんだろうね。」と言っていた。
ちなみに入荷した雑誌を品出ししたら、その日の仕事は終わりだった。だから時間が正確なのは有難かった。
毎回4時になる2-3分前になると駐車場にトラックが現れる。正直一体どうやってこんな正確に移動しているんだろうとは思った。早めに来て駐車場で時間計っているわけではなかったからだ。
そして雑誌が入荷した証拠にお兄さんの持つバーコードをレジでスキャンする。
たしかに毎回4:00なんだが、分単位まではたまたまだと思っていた。
しかし、1度だけまだ3:59だった時があって、その時お兄さんに「…まだ時間…」と言われ数十秒間その場で4時になるまで待っていたことがある。
喪黒さんの話を聞いていた時は、分単位まで正確と言うのは割と半信半疑だったが、これでこの人が時間にストイックになっているのを確信した。
いつも帽子を深く被っていてよく顔は見えないが襟足長めの茶髪で結構ワイルド系のイケメンですごく無口な印象の人。
言ってはなんだが見た目とのギャップ凄いなと思った。
ただ確かに毎日ずっと同じルーティンをこなしていると退屈すぎるので、何かルールを勝手に仕事の中に設けてそれをクリアして満足感を得たいという気持ちはわかる気がする。
雑誌以外の全ての作業が終わってる3-4時の間はめちゃくちゃ暇なので裏でドリンクやカップ麺の補充をしているのだが、4時近くになると少しソワソワしている自分がいる。
完全にお兄さんのペースに私も巻き込まれているのだ。
1度時間の確認を忘れていて裏にいた時、来店の音が聞こえ、咄嗟に時計を見て3:59だった時は思わず走ってレジにいってしまった。
正直私は、客が先にレジにいても走って行ったりはしないのに。
何となくお兄さんのルールに強力したくなってしまっていたのだ。なんだかカッコよく見ていたからだと思う。
雑誌は曜日ごとに違うが私は金曜とか土曜くらいしか出てなかったので基本同じ雑誌で、喪黒さんとシフトが同じ日はある3流週刊誌を毎回見ながら作業進めていた。
なぜかと言うとこの週刊誌の内容が中々のアホさだからだ。
例えばiPhone男子はモテるという記事や、ほうじ茶が流行っていた時は、職場でほうじ茶を飲む男は好感度アップとかこんなん男子中学生くらいしか参考にしないだろと思いつつ、毎回喪黒さんと「今週はどんなアホなことが書いてあるかなぁ〜」とか言っていた。
以上が私のコンビニ夜勤の思い出だが、都内で居酒屋やカフェとかと比べると面白さは全くない。
当時は平日昼間都内で学生やって授業終りにそのまま都内でバイトして終電で帰って、学校に行かない週末に地元のコンビニで夜勤していた。
都内のバイトは客多いし忙しくてコンビニ夜勤より忙しくてきつかったが学生スタッフばかりで3~7人とかでやってたので学生サークルみたいな感じで楽しかった。
たまに皆で飲みに行ったりもしていた。
なのでコンビニ夜勤はその骨休めみたいな感じだったので、もしこれが喪黒さんのようにフリーターになってコンビニ夜勤1本とかにしたら出会いも遊びもないので精神的に暗くなってたと思う。